インドネシアにおける都市交通管理

 急速な都市化と近代化の下でのインドネシアの取り組み

運輸省

Mr. Dwi Budi Sutrisno

 

A. はじめに

1. 都市の成長と関連輸送問題

 インドネシア都市部の人口は最近では年率4%での増加が続いており、人口増加率の全国平均を上回っている。2010年までには1億人程度の人口(インドネシアの人口の45%)が都市部に居住することになるであろう。1989年から1994年の第55カ年計画(PELITA V)により社会福祉が大幅に増加し、貿易・観光・教育・産業・政府活動の中心となる都市の数も増加した。その結果、インドネシアの都市部で都市化とともに人口が増加した。以下の7都市が100万人以上の人口を抱えている。

都市名 人口(万人)
ジャカルタ 760
スラバヤ 270
バンドン 240
メダン 190
パレンバン 130
スマラン 120
ウジュン・パンダン 110
ジョグジャカルタ 100

  自動車移動の普及や商業・産業活動の急激な発展と共に都市部の人口が急増した結果、輸送需要の実質的な高まり、交通渋滞の広がり、輸送コストの大幅増、交通事故の増加、環境汚染レベルの悪化が発生した。これが都市システム全体の効率に悪影響を及ぼし、商業や工業の生産性の低下、家計に占める交通費の増加、特に都市部の低所得者にとっては重荷になるであろう。

 

2. 都市の現状比較

 

 表1、2、3は、インドネシアの大都市の人口および移動に関する主要データを示している。

 

 

 表中の数字を見ると、自動車による移動量は、メダンの1日1人あたり0.6往復からバンドンの0.85、スラバヤの0.9、ジャカルタの1までと広がりがある。移動手段も数量は異なるが、その比率は似かよっており、自家用車の利用が公共輸送機関を上回っている(バンドンを除く)。

 これら大都市における輸送網の現状(道路・鉄道などの公共輸送サービスなどの既存ネットワーク)は、表2でわかるとおり極めて似通っている。唯一の違いは時間である。スラバヤは混雑の面ではまもなくジャカルタの仲間入りをしそうである。バンドンとメダンも近いうちに同じような状況となりそうである。これら地方都市では、ジャカルタより程度は低いものの、交通渋滞と環境汚染が急激に増加している。公共交通の比率は急激に落ち込み、個人的な輸送手段(車やバイク)が増えている。

 この状況から、ジャカルタですでに発生している問題を回避するためには、総合的な都市運輸政策が必要である。

 

3. 都市交通整備政策

 

 1995年から1999年の第65カ年開発計画(Pelita VI)に盛り込まれた整備政策

  1. 円滑・安全・確実・快適・効率的・利用者に手頃な料金の大量輸送システムの開発で、混雑・交通混乱の緩和、環境保護をする。

  2. 都市交通が最適に機能して、地域の活動やその周辺部に貢献するよう、都市部の道路網システムを連結・統合する。

  3. 都市の土地利用と新しい活動の中心としての大量輸送ルート、回廊のスペースに適合した都市内部や都市間を結ぶ輸送手段の統合を強化する。

  4. 効率のよい、高品質なサービスのための、都市輸送管理を整備する。

  5. 都市交通の計画と実行において、総合的な調整を行う。

  6. 投資や都市交通管理の面で、民間部門により多くの機会を与える。

  7. 都市交通のエネルギー節約・多様化を促進する行動を実施する。

 上記都市交通整備に関して、道路計画、主要ジャンクションの改善、高速道路に関連した交通管理計画は、ほとんどが成功している。部分的には実施されているが、全体として成功に至っていないものには、バス専用車線、バス路線、バス運行計画に関する提案などのバス優先政策、大都市バス路線への民間部門の参入を促す規制緩和があげられる。MRTシステムなどの総合運輸戦略は、大都市における交通渋滞をコントロールするひとつの方策となろう。

 

 例として、インドネシア第二の都市であるスラバヤのケースについて簡単に述べる。

 

B. スラバヤのケース

 

1. 全体状況

(1)都市部の成長

 ここ数年のスラバヤの人口増加と都市部の広がりは年率1.6%増を記録しており、2010年までこのペースが続くものとみられる。持続する経済成長と結びついたこれらの成長は、移動需要の増加をもたらした。バイクや自家用車の利用増のため、都市の道路スペースの需要は特に伸びが著しい。市内では極めて大規模な道路建設が行われたにもかかわらず、道路スペースの供給が需要の伸びに追いつくことができず、交通問題は、走行速度の低下や、交通渋滞による交通網全体の遅延を徐々に増加させている。

 

(2)運輸政策

 今までに述べた地方政府および中央政府の都市交通政策は、個人的な交通手段の利用を抑制し、公共輸送機関の利用を促している。加えて、中央政府の政策では、主要都市部では鉄道による都市公共輸送サービスの提供を示している。こういった政策目標にもかかわらず、スラバヤにおける輸送インフラへの投資は、何年もの間、主として道路輸送サービス関連に向けられてきた。

 

(3)交通渋滞

 自家用車の急激な増加に伴う交通渋滞の悪化により、公共輸送機関のサービスはますます低下し、これが自家用車、特に中間所得層の自家用バイクの利用をさらに促している。大規模一方通行システムの採用により、高速道路での運行はある程度の改善を見せている。しかしこういったシステムがジャンクションの混雑を軽減し車両あたりの走行キロ数を増加させ、大気汚染レベルを増加させている。その上、こういった交通管理施策の採用は、短期的な救済策にしかならず、渋滞は悪化し続けることになる。

 

(4)トリップの特徴

 

 移動手段別にみたモーター車両によるトリップの分布をみると、自家用車両によるものが65%で、公共輸送機関によるものは34%にすぎない。これは、自家用バイクによる移動が46%を占め、自家用車はわずか18%である。移動の目的をみるとほぼ予想通り、大半は職場への通勤(38%)、学校への通学(25%)である。残りは「その他」(16%)で、買い物・交際・出張・個人旅行から成る。また自宅をベースとしない移動が全体の21%を占める。

 1日の時間帯別の移動分布は、多少驚くべき結果となっている。主要通勤ルートでは通常の朝および夕方にピークがみられる。一方で、調査対象路線(study screen line)を横切る標本の総移動量でみると、朝のピークが終わった後も移動量はそのままの水準で一日中続き、夕方のピーク時(交際および買い物を目的とした移動が、帰宅と同時に数多く発生する)にさらに増加を見せる結果となった。

 移動距離はどの移動手段でもほとんど変わらず、バイクによる移動がやや短い。最も長い移動距離は通勤のため公共輸送機関の利用となっているが、これはおそらく、主に公共輸送機関の利用に依存する低所得者が、他の所得者層が自家用車で移動する市の中心部から離れたところに居住せざるを得ないことが原因であろう。

 

(5)SITNPの目的

 これ以上の高速道路の建設は限りがあり、悪化を続ける交通渋滞を改善することはできないという認識の下、市当局および中央政府は、分離道路や鉄道を基盤とした民間輸送機関の必要性を視野に入れた、この地域の将来の輸送ニーズに関する詳細な調査の実施を決定した。調査の目的は、この地域の将来の輸送ニーズを見極め、よりバランスのとれた輸送サービスを提供できる高速道路および公共輸送機関からなる、総合輸送網の提案を策定することにある。

 

2. 現行の輸送システム

 (1)現行の輸送網

 スラバヤの既存輸送システムは高速道路網が支えており、現在、自家用車両・商業用トラック・公共交通車両など全ての車両が利用している。1994年のスラバヤの交通網は1,723 kmで、うち有料道路はわずか29.5 km、幹線道路は52.3 km、その他のほとんどの道路(1,194 km)は地域のアクセス道路となっている。

 この輸送網における交通量の伸びは全体では5%から8%とバラツキがあるが、輸送網のいくつかの部分、とりわけ交通管理施策によってバイパス設置で輸送網が改善された部分が、高率の伸びを示している。つまり、交通量の増加は、輸送網の整備よりも速いペースで進んでいるということで、その結果交通渋滞をますます悪化させている。現在の交通量と輸送網の能力を比較してみると、主要交通ルートの多くは既に容量いっぱいか超えている。

 

(2)道路を基盤とした公共輸送サービス

 道路を基盤とした公共輸送サービスは定員70名程度の大型バスと、angkotと呼ばれる定員10人から12人を運ぶ小型ミニバスで運営している。現在320台の都市バスが運行しているが、4,919台のangkotと共に民間が運営しているのは、わずか80台である。過去20年以上にわたり、都市バスの車両数はそれほど増加していない一方で、angkotの数ほとんど規制なしに増加し続けた。

 その結果、市内のほとんどの道路で、スピードが遅く頻繁に停車するミニバスのサービスが急増した。全体として、ミニバスの運行は魅力的とはいえず、公共輸送機関の利用は敬遠されてきた。

 公共輸送機関の運営上の問題は、使用車両の種類のバランスがとれていないというだけでなく、あらゆる面で監督がうまくいっていないことにもあるようである。免許済ルートの多くで運行されていない一方で、あるルートの免許を受けた車両が別の通りで運行していたりする。

 バスターミナルにも問題がある。バスターミナルは十分な収容能力を持たず、また都市バスもangkotもターミナルで満員にしようと停車時間を延ばす傾向がある。その結果、乗客過剰とルート途中で待つ乗客が乗れない事態が発生している。

 

(3)郊外の鉄道サービス

 スラバヤには3本の鉄道路線があるが、運行本数は比較的少なく、調査対象地域内の近郊鉄道サービスの数はさらに少ない。都市部の公共輸送機関に対する鉄道の貢献度はゼロで、ピーク時でも、公共輸送機関を利用してスラバヤに出入りする通勤客のわずか3%程度が利用するにすぎない。鉄道路線は コタとウォノクロモ(Wonokromo)間以外は全体として単線で、その結果輸送旅客容量が制限され、運行本数の追加もままならない。こういった要因は、中央および西ジャワの都市につながる都市間サービス増加を求める声とも相まって、近郊鉄道サービス向けに既存線路を整備する可能性をスラバヤ-Sidoarjo線以外は著しく制限したものとなっている。

 

 

3. 短期的行動計画

 既存輸送システムの検討に基づき、今までの提案や運営面の欠陥という文脈の中で慎重に経営分析を行うことで、短期的(今後5年以内)に実行可能な改善施策を特定することができた。

 現在進めている短期的な改善策は、以下の3グループに分類することができる。

 

(1)道路の改善

 道路改善策は、提案中の内部環状道路を適切に運営するために必要と考えられる、短期的な提案に限る。この内部環状道路は、SUDPプロジェクトの一環として未だ建設中である。計画が策定されているのは2つの地域である。第一は、最近改良されたジャムル サリ(Jamur Sari)通りとアーマド ヤニ(Ahmad Yani)通りとの間を結ぶ連結道路とジャンクションの整備である。

 もう一つのジャンクションは、内部環状道路の一部でダルマワングサ(Darmawangsa)通りおよびアリランガ(Arilangga)通りを含む連結一方通行システムになる、改良カラングメンジャンガン(Karangmenjangan)通りとドゥハルマフサド(Dharmahusada)通りとの間の主要ジャンクション地域である。

 

(2)交通管理の改善

 短期的な交通管理提案には、数々の広い範囲の提案、特にSUDP交通管理実行プログラムの文脈では対象とされてこなかった種類の計画を含んでいる。これには、70 kmにわたる新しい歩道の建設、新しい歩行者横断用陸橋などの、ジャンクションや街区途中での信号機制御による横断施設、歩行者の活動が盛んな様々な交通要所や生活道路への横断歩道の追加設置などがある。 バス停や屋根付きバス停を設置するプログラムの策定、高速道路で、容量ぎりぎりあるいは容量を超える交通量を抱える数多くの交通ルートでのベチャ(becak)の運行を禁じる、非モーター車両に対する追加的制限の提案、これらのルートをベチャ(becak)が横切るための横断施設に関する追加提案も行われた。横断施設完成後は、将来的にはこのルートでのベチャ(becak)の運行を廃止する。

 信号の連動による持続的なジャンクション管理の開発やテストの支援(広域交通管理システムなど)も計画している。

 

(3)公共交通の改善

 公共交通の改善のために短期的な提案もされた。これらの提案は、特定ルートでの不適切なサイズの車両運行に関連した問題の解決に密接につながる。従ってこの提案は、いくつかの路線でangkotより大きい型のミニバスや普通サイズの都市バスの運行に切り替えることやangkot車両をサービスが貧弱な他のangkot路線に配置転換するなどの策を含む。

 現在ターミナルやターミナルの外での乗り換えを余儀なくされている公共輸送機関の乗客数の削減、待ち時間の短縮、その結果バスターミナルに出入りする車両数の増加、乗客の待ち時間や乗り換え時間短縮のため、相互接続に関する提案も行われた。

 

 

4. 総合交通網の整備

  自家用輸送手段の利用の急増、とりわけ高速道路網の整備が遅々として進まない中での自家用車の利用増は、交通渋滞の実質的な悪化をもたらした。2010年の高速道路交通の負担に関する当初の前提では、1995年の23%に対し、連結道路上の輸送網車両キロ数の58%が容量いっぱいあるいは容量を超える状態で運用されるとしていた。またこの前提では、2010年までに時速10 km以下で走行する車両時間数は、1995年のわずか2%に比べ21%としていた。

 従って、自家用車の無制限な増加は受け入れがたく、ある程度の制限を行うか、需要に見合った水準の交通網を提供するために、しっかりとした高速道路建設計画をたてることが必要である。

(1)代替交通手段の分担計画

 需要に見合う高速道路建設計画の実行は明らかに不可能であることを前提とし、公共輸送機関の利用増に合わせて自家用交通を制限することで選択し得る、代替交通政策の検討が決定された。対象となった交通手段の分担の幅は、様々な交通規制水準により、自家用40%、公共交通60%という極端な水準から現在の自家用65%、公共交通35%の水準まである。ただし、2010年の予想水準である自家用77%、公共交通23%は受け入れがたいと思われる。前提の規制案それぞれについて、交通規制の適切な水準を計算し、またバイクの交通が規制されないという仮定の下に、自家用車の規制で規制水準を達成するための政策だけを採用した。その結果、当然のことながら、バイクの使用率が低い都市の場合は、自家用車の使用に対してより厳しい規制がかかることになった。各規制案には規制水準を適用し、完全な交通モデルを使用して高速道路や公共交通網の負荷を予想した。分析の結果により、交通規制の中間水準と呼ばれる規定を盛り込んだ理想的な交通政策が決定され、自家用による移動が55%、公共交通による移動が45%となるのが適当であるとの結論を得た。このような交通手段の分担には、自家用交通を30%程度制限する事が必要となる。つまり、2010年までに市の中心部におけるピーク時の自家用車の交通を50%以上制限せねばならない。

 

(2)交通規制政策の提案

 中間的な交通規制を盛り込んだ最適な政策を採用すれば、高速道路網の混雑は、1995年の輸送網における容量ぎりぎりあるいは容量を超える運行が車両キロ数の23%という水準と比べ、車両キロ数の現行値である25%からわずかに悪化するだけですむであろう。従っていくつかの道路区間では、現在の交通混雑水準が続くことがないよう、限られた範囲での高速道路改善計画が依然として必要である。そのため、高速道路改善のための適切なプログラムが策定された。ただし、費用は暫定的な見積りでも約4億米ドルとなっている。

 大規模な交通規制を実行し、将来的に自家用交通55%、公共交通45%の振り分けを達成しようという提言の場合、規制なしの状態での増加率と比較して、2倍の公共輸送機関を供給しなければならない。このような公共輸送の大幅な増加を前提とした場合、2010年までに旅客輸送を行う公共輸送機関網内部で膨大な数のリンクがなければならない。しかし、様々な交通が混在している中で、通常の市バスの運行によりこれを達成するのは不可能である。

 従って、容量に多少の余裕があるスラバヤからシドアリョ(Sidoarjo)を結ぶ既存の鉄道網の中から少なくとも1路線を含む分離形の公共交通施設の整備が明らかに必要である。

 

(3)分離型マストランジット

 公共輸送機関の需要統計をみると、北のフェリーポートから市の中心部を通って、南へ抜けてプラバヤのバスターミナルを結ぶ南北回廊に分離型マストランジットの導入が正当化される。

 加えて、市の中心部から北へ抜けてグレシク(Gresik)に向かう東西幹線の設置も正当化される。代替計画はこれら回廊線の提案に沿って決定し、綿密な調査の上比較評価が行われた。既に決定済みのものを含む将来の高速道路の改善計画や、市中を横切る東西幹線ルートの完成となる一連の連絡プロジェクトと整合性を持たせつつ、公共輸送に関する提案が行われた。同様に、グレシク(Gresik)に向かう大量輸送機関も、グレシク(Gresik)道の道路改善計画の中核として整備が行われるだろう。このように、公共輸送機関と自家用交通施設の整備は、物理的にも、政策的にも総合的なプログラムの中で実施されるべきである。

 

(4)郊外鉄道

 スラバヤ・シドアリョ(Sidoarjo)線の輸送能力に関する調査によると、駅や停車場の追加整備で若干の能力が上積みされる可能性があるが、都市大量輸送を高頻度で運行するには十分ではない。まず第一段階として、追い越し区間がある単線での運行を継続した上で、1時間あたり4本の郊外通勤用列車をピーク方向に運行する。長期的には複線化を進めると共に、膨大な数の踏切を減らすことで、混雑する方向への郊外通勤列車をさらに増便して、1時間あたり7,000人から10,000人の旅客輸送を実現する。この郊外通勤列車による輸送能力の増強は、既存の高速道路利用による都市間バスの運行から転換される需要に見合う水準である。

 

 

C. 政府の民間部門参入政策

 政府は1990年政府規則第37号で、鉄道組織の経営形態を政府機関から公社に変更し、リストラを進める措置を講じている。新しい経営形態により、鉄道公社は事業の効率や業績改善への努力がより自由にできるようになった。

 インドネシアにおける鉄道部門の再編成に民間部門の参入を促進するために、鉄道業務に関する1992年法律第13号により、民間部門が国営企業との協力の下で、貨物あるいは旅客輸送を行うことができるようになった。さらに、政府が鉄道インフラや車両を運営委託組織に提供し保守を行い、鉄道の設計計画や技術面を支えることとなった。

 鉄道サービス増強のために、政府は1992年法律第13号その他の政策により民間の参入を促し、鉄道部門に対する民間投資の気運を盛り上げてきた。政府は、民間部門の鉄道建設への参加も目論んでいる。鉄道部門サービスの改善事業には、国内の民間企業だけに限らず、1994年政府規制第20号にあるように、外資系企業に対しても門戸が開かれている。

 政府はインドネシアの鉄道整備を支援する民間部門の役割を以下のような方法で奨励している。

 民間部門の参入は、様々な形で可能である。例えば、様々な形での建設・運行・移管方式(BOT)、コンセッション、リース、経営契約などである。政府部門が駅を含む土地や固定インフラなど鉄道の固定費に相当する額の資金を提供し、民間が鉄道を運営するという取り決め方法にも期待がもてる。鉄道運営に関心を持つ民間企業を集め入札を行う方法で、競争を導入することもできる。

 都市鉄道運営上の制約の一つに、都市鉄道プロジェクトのIRR(内部収益率)が非常に低いため、プロジェクトを民間資金で立ち上げるのがほとんど不可能であるという、財政面の問題がある。この問題解決のためには、都市鉄道事業を不動産開発など他の事業分野と合体するとともに、自動車税など政府の政策による支援を行うことが必要である。こういった仕組みには多数の行政部門がからむため、政府その他の関係当局間の調整を十分に行うことが必要となってくるのである。

 

D. 結論

 拡大を続ける都市には効率よい公共輸送サービスが必要である。しかし現状では、バス、マイクロバス、小型三輪自動車などの道路輸送手段に頼っている。これを受けてインドネシア政府は、新しい都市大量輸送手段の導入を検討し始めた。この輸送手段は、輸送能力が大きく、高速で、線路のような占有路線で運行される必要がある。

 こういった動きは第65カ年開発計画の政策や都市運輸政策にも表れており、どの政策も迅速、安全、確実、快適、効率が高く、全ての利用者に手頃な値段で、また現在の混雑や交通の混乱を解決し、環境にも優しい大量輸送システムの開発をめざしている。この政策実行のために、インドネシア政府は大量輸送ネットワークの検討が行われているいくつかの大都市で調査を実施した。はじめに、ジャカルタ都市マストランジット(JUMT)として知られる最初の大量輸送ネットワークをジャカルタに導入する予定である。今のところ、JUMTプロジェクトはブロックAからカリ ベサール(Kali Besar)までの路線の基本設計を行っている段階である。

 公共輸送手段として鉄道の開発を行うにあたり、政府の資金提供だけでは実現が不可能なことから、インフラ開発は政府と民間機関との協力で行う必要がある。運輸整備事業への民間部門の参入を促すために、政府はBOO(建設・運営・所有)方式、BOT方式その他の政府と民間によるパートナーシップという概念を提案している。鉄道業務に関する1992年法律第13号を通じて、民間部門が国営企業との協力のもと、貨物あるいは旅客輸送サービスを運営する機会を拡大した。

 インドネシアの鉄道整備を支援する民間部門の役割を拡大するために、以下の手段が講じられている。

 これらの政策は、すべて確固たる明確なルールで支えられる必要があり、政府はこういったルールを制定する必要がある。





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