ペルー

リマ市における都市公共交通システム

Mr. Rosemarie Madrid Argomedo

ローズマリー・マドリッド・アルゴメド氏

 

目 次

1. はじめに

2. 背景と現況

  2.1. 背景

  2.2. 調査区域

  2.3. リマにおける交通の特徴

2.3.1. 公共交通

2.3.1.1. 公共交通路線の規制計画

2.3.1.2. 路線の分類

2.3.1.3. 車両の分類

2.3.2. 高速道路のシステム

2.3.2.1. 高速道路の分類

2.3.2.2. 高速道路の特徴

3. 主な交通問題

3.1. 不適切な交通システム

3.3. 非効率な高速道路のインフラストラクチャー

3.4. 都市における教育計画の欠如

3.5. 都市交通の管理

4. 今後の解決策

4.1. リマ市に対する都市交通計画の実施

4.2. 北部周辺高速道路の建設

4.3. 電気鉄道プロジェクト

5. 結論

 


はじめに

 我々の日常生活にとって交通は重要かつ不可欠な機能を果たしており、あらゆる地域または国における商業および経済活動に必要なものである。このために交通問題は、都市の機能および商業活動にとってマイナス効果をもたらし、また住民の健康および安全についても危険である。交通システムの状況を改善するために我々が大きな努力を傾けているのはこのためであり、交通システムは地球上の天然資源に対して大きな要求を持ち、そして環境に対して多くのマイナス影響を負わせるので、我々は同時に交通システムを持続できるものにすべく努力している。

 本報告書の目的は、リマにおける交通システムの現在の状況および重要な問題の概況を説明し、適用可能な今後の解決案を検討することにある。

 

2. 背景と現況

2.1. 背景

 リマとカラオの首都圏地域は「国家開発の柱」として、国全体で現在発生している種々の問題を間違いなく反映している。開発の中心として大きな雇用創設を期待されていたが、生活水準の向上を求めている人々にとっては年数が経過しても確実な努力が行われたとは言えなかった。

 本報告書では討議しないが、リマおよびカラオの首都圏地域で釣り合いの取れない成長が過去30年の間に観察され、時間の経過とともに人々を満足させることのできる交通サービスを含むあらゆる種類のサービスが欠けていることが共通の問題として認識された。

 急速な人口の増加と車両の増加は、大量の車両数を取り扱うことのできなかった高速道路の飽和問題に直面し、高速道路での事故を増加し、高速道路を劣化するとともに、通過車両、排気ガスの放散、および騒音の増加による汚染増加の問題を主に引き起こした。同時に悪名高い車両の増加は、過去10年間の初めから始まった独自な市場の要求と輸入の増加によってもたらされた。

 

2.2. 調査区域

 リマおよびカラオの首都圏地域には、リマとカラオの州が含まれる。これらはペルー海岸の中央部に位置している。北部ではフアラルおよびカンタに遮られ、南部ではカネットに接し、西部では太平洋に面している。この区域は49に分かれており、43の区域がリマに、他の6つの区域がカラオに属している。この区域は、チロン、リマックおよびルリン河の堆積層の上に位置している。地勢的な境界は東部ではアンデスに、西部では太平洋に、北部ではチロン河の流域、そして南部ではルリン河の流域に接している。

リマの都市区域は、南緯12°4″から西緯72°22″に位置している。長さは2,812Kmに達する。この区域の28.4%は都市地帯であり、6.4%は農業地であり、65.1%は荒地である。一般に平坦な地形であり、海上150mの高さの凹凸が少しある。

 

2.3. リマの交通の特徴

 リマにおける都市交通システムは、市内の歴史的都心部への過剰な旅行誘致源の集中、主な高速道の低速移動、および中心部へのバスターミナルの集中に特徴付けられる。

 もう一つの大きな特徴は、不適切なサービスの質である。リマ市で見られる混乱は最近起きた問題ではない。当初は車の数も少なかった。しかし数年後、自動車輸入の自由化と雇用不足により多くの人はコンビ(小型のバン型式の車両)あるいは中古のマイクロバスを購入して都市での運送業に使用を開始した。それ以降高速道路は、劣悪なメカの状態の小型車で一杯になったというのが実態である。

 最近の調査によれば、慢性の渋滞により多額の運転費用の増加が発生し、昨年だけでも500万人/時間および約5億ドル相当の損失が交通部門で発生している。毎日600万以上の人間が、一つの場所から他の場所に移動している。その内半分はリマの中心部に向かって最低一日2度は移動している。中心部におけるラッシュ時には、33,500台以上の車が中心部を横断しようとしている(通行人数の図を参照)。

 移動の多くの問題は優れた高速道路のインフラストラクチャーが不足していることに原因があり、既存の高速道路は多量の車両を取り扱うように設計されておらず、またその状態も劣悪である。交通に対する需要を反映して、中心部と周辺の区域を結ぶ主要な交通路が整備され、ラッシュ時には25,000台から40,000台の車を取り扱うできるようにした。

 他方、リマ中心部には265の交叉点を管理するコンピューター制御による交通信号計画があり、その内65は既に設置され、残りの200はこれから設置の段階にある。中心部では2,000個所の交叉点にこのシステムが必要であるが、最初の段階では450の交通信号を設置する計画である。

 1996年の公共関係交通の車両総数は88,000台であった。現在ではラッシュ時の交通量は1時間あたりおよそ220万台で、1車両あたり13人の居住者の関係があると推定さる。一方、市内では約650の公共交通の路線があり、その内30%は需要を持たすためにリマの中心部で運行されている。

 公共関連の交通サービスは、3つの種類(バス、マイクロバスとコンビ)により行われている。乗車能力の大きなバスの公共交通サービスに占める割合が減少しつつのが観測されている。

 リマでにおける都市交通の状況は非常に深刻である。次の問題が顕著である: 交通の渋滞、高速道路の不良状況、乗車人数の容量が増加しないままの不適切な車両数、高速道路安全教育の欠如、法的および管理面の制約、および不十分な事業組織である。

 

2.3.1. 公共交通

2.3.1.1. 公共交通路線の規制計画

 我々の都市は大きな交通問題を抱えている。年数を経過しても改善の努力が行われないために崩壊の段階にまで時には進み、ある部門では非難されることになる。比較的短期間では、部分的な解決策しか計れない。しかし公共交通路線と車両輸入の自由化が行われた1991年以降、現在の高速道路のインフラストラクチャー開発と対立する車両数の不釣合いな増加は関係当局に根本的な解決策を考えさせるようになり、市内を循環する路線数縮小を管理するための解決策としての都市交通規制計画を1993年に承認したが、引き続きおきている交通問題の原因である路線の創設、または修正に対する技術的根拠が欠けているために部分的な解決策となりつつある。現在では、都市交通規制計画は路線の指定あるいは変更を中止し、高速道路の容量、道路の設計、土地の利用、旅行需要、交通サービス需要と供給の分析、車両容量、などに用いられる技術的要素を考慮しながら改良のプロセスを実施して、現在リマ市に影響している主な問題の一つである路線の不釣合いな増加を抑制している。

 

2.3.1.2. 路線の分類

 公共交通路線は次のように分類される:

 公共交通路線の総数

1993年から1998年の相対変化

路線種類

1993

1998

正規

221

240

接続正規路線

104

157

非正規路線

78

261

接続非正規路線

5

8

合計

408

666

 

路線規制計画調査局

2.3.1. 車両の分類

 交通システムは以下の車両タイプに分類される:

  バス-----乾貨重量3,100kg以下で、50人以上の乗客容量の公共交通車両。

  マイクロバス-----乾貨重量3,100kg以上で、乗客26名以上50人以下の容量を持つ公共交通車両。

  コンビ-----乾貨重量1,600kg以上で、乗客26名以下の容量を持つ公共交通車両。

 公共交通車両の推移

リマ市内の車両数

1986年から1996年までの推移

車両数

変化率()

1986

396682

1987

400130

0.87

1988

404406

1.07

1989

401842

-0.63

1990

397623

-1.05

1991

413318

3.95

1992

456023

10.33

1993

482573

5.82

1994

521049

7.97

1995

588072

12.86

1996

636864

8.3

年平均

4.95

 

交通用車両数---1998

型式

車両数

タクシー

55500

コンビ

24400

マイクロバス

11400

バス

9540

スクールバス

330

合計

101170

 

2.3.2. 高速道路システム

2.3.2.1高速道路の分類

 都市高速道路システムでは、5つの種類の道路を考慮している:

 

2.3.2.2. 高速道路システムの特徴

 都市の高速道路システムは、放射線環状道路で成り立っている。接続する環状道路はない。高速道路のインフラストラクチャーは、周辺地域から都市中心部へのアクセスを持たせることを目的としている。このために、都市の異なる地帯の間の交通は時には中心部を横切る必要があり、北部と北東部地帯と他の都市部分を接続する中心地帯の3つの回廊部分を混雑させる。更に、いくつかの例外はあるが殆どの横断道路は連続していない。多数の都市の旅行誘致および発生源は都心部から他の区域に移動したが、都心部は依然として主な旅行誘致源としての位置を保っている。特に金融および私企業などはその例である。

 

3. 主な交通問題

 リマにおける都市交通の状態は非常に深刻であり、下記のような問題が顕著である:

3.1不適切な交通システム

 旧式で小型の大量の車両それ自体が、不適切な交通システムの原因になっている。リマおよびカラオの首都圏部における車両数は人口および経済発展と同じ比率で増加している。市当局によれば1996年における車両登録台数は65万台以上であり、その内98,000台は公共交通である。1992年と比べると、車両の輸入自由化を反映して車両登録台数は10.33%の驚異的な増加を示している。それらの多くは公共交通サービスに使用される中古車である。車両の機械的状態は貧弱なので、多くの事故を発生させている。そしてこれらの多量の車が既存の高速道路システムを破壊させ始めたのである。

3.2非効率な高速道路の構造

 リマおよびカラオ都市区域は、放射形状道路と狭い道路から減っており、主要道路へ接続していない。この特徴は、不釣合いな都市の発展と都市自身の設計を反映している。これによって、経済活動が増加している南部、北部、そして東部地域に向かう都心部のそれぞれの出入口における渋滞の原因になっている。一方、新しい開発区域には幅の広い道路があり、交通需要の問題を部分的に助けている。

 1990年の道路延長1394Kmの内、27.6%の道路は劣悪な状態にあり、72.4%は恒常的な保守を必要としている。現在、これらの道路の50%以上が改修を必要としており、交通費用と所要時間の増大につながっている。

3.3教育プログラムの欠如

 基本的な交通規則さえ知らないバスの運転手や歩行者に対する教育プログラムがないので、事故の数は増加している。国の警察の統計によれば1996年には1,114件の交通事故が記録されており、その内401件はスピードの出し過ぎ(36)246(21.99)は歩行者の不注意、144(12.93)はドライバーの不注意、そして31件(2.78%)はドライバーの酔っ払いが原因である。これに加えて、不十分な交通信号と非効率な高速道路の構造が問題を悪化させている。

3.都市交通の管理

 政府における3つのレベルで少なくとも16以上の機関が、この部門に関する直接の責任を持っている。リマおよびカラオの都市交通管理は分散している。リマおよびカラオの市当局および輸送通信省が責任を持っている。一方、検査と統制は国の警察部の責任である。これら機関間の調整は非効率で多数の組織が関与しているために、行動の計画および実行に際して無駄な努力がなされ、また資源の活用も効率よく行われないと考えられる。

 

4. 今後の解決策

4.1. リマ市に対する都市交通計画の実施

 ペルー政府は交通通信省およびリマの都市交通プロジェクトの実行機関(PROTULM)を通じて、リマの都市交通開発に対する支援プロジェクトを作成中であり、BIRFおよび米州開発銀行(BID)が融資を検討中である。

 このプロジェクトは、3つの大きな要素から成り立っている:

  @ 主要公共輸送回廊の実施、リハビリ、および改良。

  A 輸送および交通の改良:

   − 低収入区域の舗装

   − 高速道路の改良と保守

   − 交通管理の改善

   − 高速道路の安全

   − 歩行者用設備と自転車用道路の建設

   − 大気汚染の削減

  B 制度の整備

  これは市に大きな影響を与えている関連都市交通問題を改善するためのプロジェクトとして実施すべき主要な措置である。

 

4.2. 北部周辺高速道路の建設

 このプロジェクトは、リマ市へのアクセス、出口および構造を改良するための基本的な高速道路の概念と計画から構成される。

 これは特に、首都からの国および國際的な出入口に対する交通の流れを改善する高速の複線の高速道路であり、地方の支線道路を持つものである。

 計画されている高速道路は、都心部および渋滞地帯に入るのを避ける新しい高速道路リングの北部に位置し、10の地区を結ぶものである。

 このプロジェクトの建設により、次の目的の達成を目指している:

 

4.3. 電気鉄道プロジェクト

 1950年以降、リマおよびカラオの首都圏地域の都市交通問題に対する解決策として、電気鉄道(6プロジェクト)の建設に関する一連の研究と提案が行われてきた。1986年には政令により、電気鉄道に対する特別プロジェクトとして独立機関(AATE)が設立されて工事が始まり9.8Kmの軌道が建設された。建設予算は31,270万ドルであった。AATEの報告によれば、世界銀行はこのプロジェクトを承認せず、民営化が提案された。それ以来今日まで、電気鉄道の最初の軌道とメトロバス・システムと統合して都市の主要回廊を通過するプロジェクトになっている。

 電気鉄道は発掘燃料を使用せず電気を使用するので、この建設は大気汚染削減に役立つとともに、都市交通の効率を改善する。電気鉄道の車両は1,500人の乗客を収容することができ、都心部と都市区域内の発展地点を統合する周辺地帯とを結びつけることができる。

 

5. 結論

 都市における交通問題はますます管理しにくい状況になっており、現在の輸送システムを改善するためには効率のよい解決策を必要としている。

 交通が国の基軸であり、発展と同義語であることを国民が理解する意識を持つように交通部門の改善はなされなければならない。我々エンジニアは、未来のために優れたそして持続する交通システムを考え出し、提案し、そして設計しなければならない。




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