ルーマニア

ブカレストの都市交通

Mr. Marian Dumitrascu

マリアン・ドゥミトラシュ氏

 

ブカレストおよびその周辺都市区域における最近の交通事情

 

 ルーマニアは現在、市場経済へ移行過程にある。

 ルーマニア社会のすべての部門は、公的資金およびサービスの大幅削減によりこれらの不足に苦しんでいる。

 この影響を受けて都市交通の分野では、インフラストラクチャーと車両の不完全な保守、およびサービスと能力の悪化と不充分さに結びついての多くの問題に直面している。

 大都市においては、公共輸送が最も大事な交通手段である。

 ルーマニアの首都であるブカレストへは、飛行機、道路、あるいは鉄道により容易に行くことができる。2つの空港(國際および国内空港)は市につながっている。鉄道は1日あたり35万人の乗客を運んでおり、3つの大きな駅と2つの小さな駅がある。

 ブカレスト市とその近辺都市区域の人口は約235万人で郊外地域を含む710平方キロの行政区域に分散しており、公共輸送は年間約81,800万人、また地下鉄は18,000万人の乗客を取り扱っている。

 真の広域都市圏の広さは228平方キロで、200万人の住民がいる。都市および交通の観点から見ると、ルーマニアの最大都市および主な政治と行政センターで、次に定義する3つの同心円区域に分類される;

 都市中心部は環状および直角な道路ネットワークにより郊外と結ばれており、RATBバスが運行されている。都市は平坦で、主な街と二次的な道路は西洋の物差しで見ると比較的広い。

 このような配置のために住宅区域とビジネス区域(しばしば反対側にある)間の距離は大きく、歩行者が移動に歩く比率は小さく(5)、大部分は路面または地下鉄を交通手段として利用している。この移動では、互換性がある。

 1日あたり合計350万トリップに対する市場での比率は、地上が60%であり、地下鉄が20%を占める。

 自転車移動があまり使われない理由は、ブカレストには自転車専用レーンがないためである。

 自動車の総数は、1990年から現在までに39%増加した。1995年の自動車数は千人あたり212台で、乗用車の数は千人あたり170台であった。

 過去数年間のブカレストにおける交通の特徴は、モータリゼーションの増加(主に中古車の購入による)に伴う渋滞の増加である。

 この直接の影響として、全般的な交通速度の低下があげられる。交通速度の低下により投資効率を低下させるので、RATBによる路面電車の近代化および新しいバスの購入計画(ユーロ1およびユーロ2)にとって好ましくないものである。

 ブカレスト市の主な目標は、ブカレストの交通全体に占める公共交通の高い比率を維持することである。この目標達成のために市当局は、サービスの質を高め、公共交通が関係 する交通渋滞を減少し、交通安全とモーダル間(RATBと地下鉄)連携を向上しようとしている。

 

ブカレストの公共輸送

 1)地下鉄:

  地下鉄サービスは運輸省の管轄下のMETROREXが行っており、路線の長さは59km

 (複線)で41の駅があり、3つの路線がある。

  かっての政府は機材およびノーハウの輸入を禁止したので、地下鉄ネットワークおよび車両はルーマニア国内(SC ASTRA ARDにより)で製造されている。

  ブカレストの地下鉄は1975年から1989年の間に、毎年約4km、国内の会社により建設された。1989年以降は建設が行われていない。また、地下鉄2路線の延長および駅の工事は未完成である。

  技術的な問題により地下鉄車両の内約25%は、日常の運行に使用できない。

  またネットワーク、動力供給、トンネル建設などは、建設および保守が劣悪な状況に直面している。

  技術的な特徴

   - 交通システムの種類: 地下鉄

   - 軌間:        1,432 mm

   - 平均駅間距離:  1.5 km

   - 軌道方式:    + 木製枕木およびバラスト道床

               + ダブル・ブロックのコンクリート枕およびコンクリー

                ト道床

   - トンネルの形状:  + 複線箱型トンネル

               + 単線円型トンネル

  電力供給システム:

   (a) 一般路線:     第三軌条直流750Vdc

   (b) 車両基地:         架線電車線直流750Vdc

  信号システム:

   (a) 自動閉塞信号方式

   (b) 列車集中制御装置による信号設備遠隔制御

   (c) 非連続速度制御システム

  車両

   - 2両固定電気車両、自動連結器つき

   - 車両の長さ: 18.6m

   - 幅: 3.10m

   - 高さ: 3.40m

   ― 定員:  座席;34

立ち席;200人(1平方mあたり5人)

        立ち席;300人(1平方mあたり8人)

   - 主電動機出力:   185kw;

   - 車両重量:    36トン

   - 営業路線最小曲線半径:150

   - 最高速度:    時速80km

   - 最大加速度:    1.35/平方セコンド(4.86キロ/h/秒)

   - 平均減速度:    1.0/平方セコンド3.6キロ/h/秒)

   - 中央指令所との選択および通常通話無線通信システム

   - 車内旅客用情報システム

 

 2)地上公共交通:

 路面電車、トロリーバスおよびバスの地上公共交通は、ブカレスト市の管轄の下でRATBにより運営されている。

 所有する2,149両の内、およそ1,455両が日常の運転に使用されている。

 36の路面電車の路線(複線で153km)18のトロリー路線(複線で69km)、および116のバス路線(往復路で416km)がある.

   路面電車用車両(657両の内、約59%の386両は毎日運転されている。)は主にルーマニア製の車両で、残りはドイツのフランクフルトとミュンヘンから来た中古の車両である。

  すべてのトロリーバス(総数247両)はルーマニア製であり、186両が毎日運行されている。

  バス車両の総数1,245台で、その内883台が毎日運行されており主にルーマニア製(総数の65%)であるが、残りはハンガリー製IKARUS 260(137)、オランダからの新しいDAFバス、およびパリからの中古のフランスSaviem137台)である。

 19971231日現在の車両在庫の使用率は、路面電車の約74%、トロリーバスの約75%、そしてバスの約70%である。

 RATBはインフラストラクチャー(道路、軌道および電力供給)および車両製造と保守についての貧弱な品質管理に関して大きな問題に直面している。

 個人が所有する自動車の増加および不十分な駐車管理は、交通速度の低下および地上公共交通に対する信頼性などの新しい問題を生じさせている。

 

 3)鉄道

   鉄道はブカレストの都市交通システムとしては、大きな役割を持っていない。

   5つの駅の内2つは周辺地域にあり、「北駅」と他の2つの駅のみが重要である。

 

 4)民間の交通---タクシーとマクシタクシー

 ブカレストにおける自動車の所有の程度は比較的低い(1,000人につき約170台で、欧州では400台である)。経済が市場原理に向かうのにつれて、この比率は急速に増加するものと予測されている。現在ある車は、年数も古く、大気汚染対策もよくない。

 道路の配置はよいが、道路表面の状態は悪く、交通工学と管理手段は貧弱か、あるいは存在しない。

 世界中の大きな都市で見られる渋滞に比べればは、混雑は比較的穏やかである。

 低収入者向けに計画されている高層アパートに向かう道路(移動と駐車車両の双方)では、今後深刻な交通渋滞と駐車場の混雑が発生する可能性がある。

 タクシーの数は多いが、既に無線で管理されている。ここ当分の間はタクシーの数は充分であると考えられる。ミニバスのシステムは公共交通を補っている-----マキシタクシー。

 5)結論

 ブカレスト市は過去30年の間、住民の数が3倍になり、新しい住居地域と工業区域による区域の拡大を伴う重要な経済および社会開発に直面した。

 これらの問題により、ブカレストに勤務場所を持ち周辺地帯に住む人々が毎日殺到するようになった。

 開発に際しては土地調査の原則を考慮せず、さらに都市の調査、交通調査、都市公共交通調査も実施しなかった。

 これらの間における都市交通の発展は、地上の交通手段および地下ネットワークとは関係なしに徐々に進んだのである。

 このようなシステムは、都市の間の交通ネットワーク(鉄道、バスターミナル、空港)には結び付けられなかった。

 ルーマニア、特にブカレストで発生した経済および社会変革は、都市利用の間のシステム、車両および訪問者の流入発生のシステムを変化させて1989年以降、都市の公共交通問題をますます困難にした。新しい戦略の主な目標は、都市ネットワークと郊外ネットワークとの間、また都市間の鉄道ネットワーク、地下鉄および航空路と密接な関係を持つ総合輸送システムの構築である。

  我々は2015年の状況を考慮に入れて検討しなければならない。これらの問題や他の関連する事項を解決するために、ブカレスト市当局はルーマニア政府を通じて日本政府の援助を要請した。現在、ブカレストには國際協力事業団を中心とする日本の調査団がおり、「ブカレスト市および近辺都市区域を対象とする総合都市交通調査」を実施中である。

 



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