上海の運輸事情

Ms. Ruan Zheming

上海市総合交通計画研究所

上海の運輸事情

1.現状

 上海は中国における最大の経済の中心地である。市全体は15の行政区域からなる都市部と5つの郡からなる郊外地域から構成され、総面積は6,340 km2である。上海の輸送システムは、1,300万人の居住者と様々な目的で移動する100万人の浮動移動者からなる1日約2,800万トリップの移動を支えなくてはならない。同市の輸送システムは、54万台の自動車、600万台以上の自転車、12,000台のバスとトロリーバス、全長5,712 kmからなる道路から構成される。

 上海の地上旅客輸送網は全長18,593 kmで、390の路線に12,000台の車両が運行されている。1日あたりの平均運行距離は100kmで、平均旅客輸送量は600万人である。

 1990年代に入って、輸送インフラに対する投資は増大した。公式統計によると年間投資額は1991年の87,800万元から1997年には935,000万元に増加。投資額の増加により、上海の運輸供給事情は改善した。1991年と比較すると道路は895 km伸び、総面積は24.98 km2増加した。また1人あたりの道路面積は3.4 m2から6.1 m2に増加した。しかし自動車の増加ペースが道路面積の増加を上回っているため、依然として深刻な交通問題に直面している。

 

2. 上海における現在の主な輸送問題

2.1 ほぼ飽和状態の道路交通量

 交通量が多い一方で、自動車のスピードはあまりにも遅い。1995年の交通総合調査によると、市中心部の主要交差点160カ所中、深刻な混雑が見られたのは60カ所以上にのぼる。市全体で見た自動車の平均走行速度は1985年の時速19.1 kmから、1990年には同17.5 kmに、1995年には同15.5 kmまで低下した。上海市中心部におけるピーク時の幹線道路の平均負荷率は、0.9を超えている。

 

2.2 住民の移動需要を満たすことのできない公共旅客輸送システム

 上海市民にとって公共旅客輸送機関は主要な移動手段であるが、公共輸送車両の運行速度は年々遅くなっており、運転間隔も維持できなくなっている。バス停に使える場所が限られているため、乗り換えのための歩行距離も伸びている。新興開発地域では十分な公共輸送機関がなく、車があふれかえっている。同時に、経済発展のおかげでバイクや車が増加する可能性が非常に高い。

 

2.3 交通秩序の混乱

 

3. 将来計画

 最近では、道路網の効果的な利用には、通勤・通学路線の設置や公共輸送機関の優先が重要であるとの認識が高まりつつある。

 上記の分析を基に、上海市は以下の運輸戦略を採用すべきである。

 

3.1 都市鉄道輸送整備への注力

 現段階において、上海の運輸戦略では都市鉄道輸送の整備を重要視すべきである。一つには、人口密度が極めて高いため、輸送につかえる土地は極めて限られている。市の中心部では、地上公共輸送機関の能力はほとんど限界に達しており、乗客数のさらなる膨大な増加を処理する良策は見あたらない。都市輸送の公共輸送機関の優位を維持、発展し、私的交通の増加を制限するためには、道路以外の輸送機関の整備が唯一の方策である。もう一つは、都市部の拡大に伴い、同市の輸送軸線は徐々に伸張してきた。例えば、市の西部に位置する虹橋空港から浦東新地の外高橋(Wai Gao Qiao)地域までの距離は33 km、市北端の宝山地域から南端のMin Hang地域までは58 km、市周辺部にあるこれら新興住宅地域から市の中心部への距離は14 kmである。移動距離が長く、長時間の移動は市民には耐えがたい。

 上海の総合基本計画によると、鉄道システムとして重軌道鉄道システム(11路線、385 km)と軽軌道鉄道システム(10路線、177 km)の2つを予定している。20世紀末までに、130 kmの鉄道を建設する予定である。21世紀前半には、全鉄道システムが建設される予定である。

 

3.2 都市公共輸送機関に対する支援と優先的整備

 上海全体で、様々な公共輸送機関優先政策が策定、実施される予定である。

  1. 優先走行
    公共輸送機関の車両がルートを走行する場合、優先権が与えられる。公共輸送機関優先政策として最も一般的なバスやトロリーバスの優先車線が含まれる。

  2. 優先アクセス
    公共輸送機関の車両は主要ポイントに行くために渋滞ポイントを迂回、行列を飛ばすことができる。

  3. 優先信号システム
    公共輸送機関の車両を優先するよう交通制御信号システムを変更する施策

  4.  

3.3 自転車の走行を自動車の交通から分離する交通システムの開発

 自転車専用道路を設置して自動車の交通から分離する。また3つの環状道路と10の放射状道路からなる高速道路網の整備、市内の幹線道路網の改善、幹線道路とローカル道路のシステムの整備により、時速30 kmで走行可能な高速道路システムを作り上げる。




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