タイの都市公共交通

 

Mr. Siripong Preutthipan

 

タイ国営鉄道・運輸交通省

 

 

 

タイの都市公共交通

 非組織的で計画性のない都市計画により、タイのインフラは、オフィス、ショッピングセンター、ホテル等が高い密度で繁華街に集中する劣悪な状態となっている。地方から都市に流れ込む人の数は増加が続いている。同時に、国全体の人口も急速に増加しつつある。これらの要因は、将来的に都市爆発を引き起こすであろう。

 現代都市の基本的な存在理由は、近代市民社会の複雑で大規模な活動促進のために、居住、労働、買い物、占有の場所を狭い地域にかため、輸送を減少する必要性のためである。その結果、輸送の必要性は狭い地域の中だけで高まり、そういった場所では土地需要が高まり、輸送需要を発生させる活動が集中する結果となった。

 そのため、都市の輸送施設の供給は極めて困難かつ高額となり、都市の規模が拡大するほど、困難さも増す結果となった。劣悪な輸送システムは、都市の生活を耐え難いものにする。世界の人口の中で悪化し続ける輸送システムの都市に住む人々の割合は、急速に増加しつつある。

 現在タイ国鉄(SRT)は、ディーゼル電車と通常の列車を計71列車通勤用電車として供給している。主な問題は、政府から価格規制を受けていることに加え、投資と営業費用の負担が大きいため、SRTが依然として赤字で運営されていることである。現在は高速道路もあり、また大量旅客輸送プロジェクトも進行中である。各プロジェクトはバラバラに計画されており、各省庁は管轄するプロジェクトしか配慮しないことから、これらの計画の修正は必至で、修正が無ければ、ほとんどのプロジェクトは経済的にも技術的にも実行不可能となるであろう。適切な大量旅客輸送システムは、総合的なネットワークでなければならない。これらのプロジェクトを統合してみると、数多くの交差部分で重複や矛盾があることがわかる。またバンコックには文化的、歴史的な施設が数多く点在していることから、景観の問題も持ち上がっている。

 BMAやBMRへの人口集中から、鉄道システムの大量旅客輸送サービス提供は不可能である。その上、バンコク周辺地域の都市開発は、主に幹線道路沿いに進んでおり、乗客は道路輸送を利用せざるを得ず、その結果市中心部の道路輸送は、交差点の横断を待つ車で混雑が激しくなっている。

 加えて、バンコク首都地域の鉄道は、未だ単線であるなど近代化の遅れのため、鉄道輸送能力は需要増に追いつかず、タイの経済発展の大きな足かせとなっている。

 

 

都市輸送のための総合基本開発計画

 以下に示すのは、バンコクの交通渋滞緩和を目指したプロジェクトである。

 バンコクの深刻な交通渋滞を解決するためには、総合的な都市型の鉄道整備が必要である。鉄道の実現は、市民に対して、より快適で文化的な生活を保証し、首都バンコクの環境汚染を軽減するであろう。計画の詳細は以下の通り。

  

 SRTは以下のサービスを提供する。

  

 

道路交通輸送計画

 この計画は、首都バンコクとその近接地域に、1路線1時間あたり約4万から6万の旅客輸送能力をもつ電車の路線網の設置を目的とする。

 

   フェーズ1

     110 km。現在進行中の3つのプロジェクトを含む。

 1. タイ国鉄(レッド路線)のバンコク列車公共輸送および高架道路プロジェクト(ホープウェル)。このプロジェクトには、3つの路線がある。

 

1.1 レッド線(南北)はRangsitHua LamphongPho Nimitを結ぶ、全長34.2 km

 

1.2 レッド線(東西)はHua MakYommaratTaling Chanを結ぶ、全長22.6 km

 

1.3 マッカサンに沿ってラマ4世通りとチャオプラヤ川を横切るレッド線、全長は3.3 km

 

 2. バンコク・マストランジット会社(Thanayong)によるバンコク・マストランジット・システム プロジェクト(グリーン路線)は2つの路線に分かれる。

 

2.1 スクムビット線はSoi On Nut(スクムビット77)から北部乗換駅(Talat Mor Chit)を結び、全長16.8 km

 

2.2 シーロム線はSathonからSanam Kelaを結び、全長6.9 km

 

 3. 首都高速トランジット公社(MRTA)による首都電気鉄道プロジェクトの第二段階で、全長103 km(ブルー路線)

 

3.1 ブルー線(南)はHua LamphongからHuai Khwangを結び、全長9.6 km。この路線は地下鉄で、Hua Lamphongからラマ4世通りに沿ってSam YanRatchadaphisek通り、スクムビット通りを経て、Khlong Saen Sap、新ペチャブリ通り、ラマ9世通りの交差点の下を通過して、Huai Khwang地域に至る。

 

3.2 ブルー線(北)はHuai KhwangからBangsueを結び、全長11.1 km。この路線は地下鉄で、Huai Khwangの南(フォーチュン・ビルの正面)から、Ratchadaphisek通り、Lat Phrao通り、Phahon Yothin通りに沿って、Don Muang有料道路の下を通り、Chatuchak公園、Mor Chit通り、Kamphaeng Phet通り、Thoet Damri通りを経て、Bangsue駅に至る。

 

 

   フェーズ2

103 kmで、フェーズ1の延長プロジェクトおよびオレンジ線電気鉄道プロジェクト(新路線)を含む。建設期間は1995年から2001年。

 1. レッド線(延長路線)

 

1.1 レッド線(R-1)はホープウェル プロジェクトの延長で、Yommaratの西からChim Phli通りの外周までを結ぶ、全長14.3 km

 

1.2 レッド線(R-1)はホープウェル プロジェクトの南部への延長で、Hua LamphongからBang Khun Thian通りの外周までを結ぶ、全長16.9 km

 

1.3 レッド線(R-3 はホープウェル プロジェクトの東部への延長で、Hua Mak、らバンコク第二国際空港、Lat Krabangニュータウンを結ぶ、全長13.6 km

 

 2. グリーン線(延長路線)

 

2.1 グリーン線(G-1)はThanayongプロジェクトの南東部への延長で、On Nutの東から、バンコク第二国際空港の南までを結ぶ、総延長21.4 km

 

2.2 グリーン線(G-2)はThanayongプロジェクトの北部への延長で、Mor ChitからRatchayothinまでを結ぶ、全長3.4 km

 

2.3 グリーン線(G-3)はThanayongプロジェクトの西部への延長で、Sathon通りの終点からWong Wian Yaiまでを結ぶ、全長2.7 km

  1. グリーン線(G-4)はThanayongプロジェクトの南部への延長で、Bang Naから南Sam Rongまでを結ぶ、全長5.9 kmである。

 

 3. ブルー線(延長路線)

 

 

3.1 ブルー線(B-1)はBangsueからPhra Nang Klao橋までを結び、全長11 km

 

3.2 ブルー線(B-2)はHua LamPhongからKang Khaeに至る全長13 km

 

 4. オレンジ線(新路線)はBang Kapiからラマ9世橋までを結ぶ。この路線の最初の部分は地下鉄で、Lam Sali交差点(Bang Kapi)を起点として、Ramkhamhaeng通りに向かい、Soi Nuan SiRamkhamhaeng 21)に沿って、バンコク首都電気鉄道に近いHuai Khwangのメンテナンス駅を通過し、At Narong-Ram Inthra高速道路とKhong Lat Pharaoの下を経由して、Ratchadaphisek通り、Soi Chan Muangでバンコク首都電気鉄道のブルー線の下を通り、Don Muang有料道路の下を通ってVibhavadi Rangsit通り沿いに進み、第二段階高速道路に下をくぐりRatchawithi道り沿いに進み、Thanayongのグリーン線の下を通り、勝利記念塔の下をくぐってホープウェルのレッド南北線の下を通ったあとBan Ratchawithiで左に曲がり、パープル路線と並行にSamsen通りにつながる。その後Khlong Phadung Krung KasemKhlong Rop Krungの下を通り、Phra Sumen通りに沿ってRatchadamnoen大通りの下を通り、レッド線(R-1)、Mahachai通りを経てCharoen Krung通りでブルー線(B-2)の下を通り、チャオ プラヤ川の下を通ってPrajadhipok通り沿いに進み、タクシン大王像の下を通り、レッド線(R-2)とグリーン線(G-3)の下を通り、Khlong Sam RaeKhlong Bau Nam ChanRatchadaphisek通りの下を通る。

 

 

   フェーズ3

     建設期間は2001年から2011年で、2つの路線に分かれる。

 1. パープル線はThewetからBang Phut(Pak Kret)までの全長21.2 km。

 2. オレンジ線(延長路線)

 

2.1 オレンジ線(北部延長)はBang KapiからMin Buriまでを結ぶ。Lam Sali交差点のBang Kapiを基点として、Sukhaphiban 3通りに沿って走り、Min Buriに至る。

 

2.2 オレンジ線(南部延長)はSuk Sawat通りのラマ9世橋の下を基点として、Phra Pra Daengを通る高架線である。

 

 

問題点の分析

 交通渋滞は、タイ経済に損失をもたらしている。各システムやプロジェクトは、相互に補完しあい、輸送網として連結される必要がある。総合交通網が完成すれば、深刻な交通渋滞問題の緩和、環境の改善、良質な生活、コスト削減、エネルギー消費の削減、速度上昇などの経済的なメリットを産みだし、タイ国にプラスの影響を与えるであろう。

 この交通渋滞緩和という目標達成のために、以下の戦略を提言したい。

 この戦略は、良質な大規模旅客輸送システムの整備と並行して、公共事業の整備を進めることを目指すものである。さらにこの戦略により「衛星都市」の開発が進み、また村、郡、地域レベルでの交通計画も策定することができる。目標は、全ての層における雇用創出である。人々はオフィスの近くに住み、良好な公共事業を利用し、政府は自動車に頼らないシステムやスカイ トレインなどの便利な交通手段を提供する。

 この戦略は、輸送情報データベースの開発を目指す。交通問題の効率よい管理や解決のために情報を求める全ての組織は、同じ情報を簡単・即座に入手することができる。

 この戦略は、チェンマイ、ナコーン ラーチャシーマー、チョンブリ、ソンクラ・ハットヤイなどの大都市における車両数を制限するものである。シンガポールの商業地区のように、政府は都市の混雑地域への入域に際し料金を徴収する。また3人以上の乗客を乗せた車両は、無料で商業地区の規制地域への入域を認める。さらに政府は、税率の引き上げ、車の購入を現金に限る規制を施行することもできる。

 この戦略は、公共交通の利用を促進し、自家用車の数を減らすために、公共交通の質やサービスを改善するものである。例えば、BMAはエアコン付きバスを増やし、全ての幹線道路でバス専用レーンを設置する。





Back