メキシコ シティーはメキシコ共和国の中央、2つの山脈の間に位置する。標高は2,240m、気候は半乾燥で温暖である。メキシコ シティー都市圏の人口は1900万人で、これにはシティー周辺の都市部の人口も含まれている。
経済的にはメキシコ シティーは国内総生産の24.1%を担っている。316の企業が域内にある(メキシコの企業の80%)。市内では一日の総トリップ数は3000万トリップで、職場への通勤が主である。その他の移動の目的は、通学、買い物、その他である。
ここでメキシコ シティーとその周辺の交通事情をもう少し詳しく説明しておこう。メキシコ シティーの交通網は、ペリフェリコやヴィアデゥクトのような出入制限のある道路が構成している。前者は都市周辺をめぐる環状道路、後者は東西に走る道路である。これらがメキシコ シティーの幹線道路である。
一方、街を方形に区切る道路も多数存在する。たとえばヴィアル アクセスや、レフォルマ通り・インスルヘンテス通り・北ディビジョン通りなどの重要な通りである。これらはすべてメキシコ シティーの主要道である。
市内の交通システムとしては他にも79,288台の「個人」タクシーや、9,941台の車両基地を持つタクシー、さらに最も人気がある「マイクロバス」と呼ばれる乗り合いタクシーもある。このマイクロバスは定員が25人、車長は通常のバスのおよそ半分である。現在27,411台が登録されているが、未登録のマイクロバスも運行されている。
市内のバスは経営の失敗からシェアを失い、破産した。このためバス路線の一部には共同で管理されているものもある。
トロリーは地方自治体が運営しており、社名は電気交通システム(スペイン語でSTE)という。これも他の電気による交通機関と同様、路面電車である。トロリーは17路線で410車両が運行されている。路面電車の唯一1路線だけが、シティー南部のタスケニャからソチミルコまでを結んでいる。
メキシコ シティーの交通の骨格を担っているのが、地下鉄である。総延長178km、154駅を擁するこの地下鉄は、集合交通システム(スペイン語でSTC)が運営している。毎日約400万人の乗客を運び、地下鉄では世界第3位である。
地下鉄には9両編成が202編成、6両編成が20編成あり、10の路線が色とマークで識別できるようになっている。
地下鉄と地上の車両との違いは、多くの点で明白である。たとえば、地下鉄の表定速度はおよそ時速35kmであるのに対し、バスとトロリーは時速17km、マイクロバスは20km、特殊車両で25kmに過ぎない。
さらに、市内には1,118カ所に駐車場があるが、それでも特にダウンタウンや中心ビジネス地区(CBD)では不足している。地下鉄駅の近くなど市内のあちこちに乗り継ぎ施設があるが、主にメキシコ州の区域内で、交通当局の管理が行き届いていない。
汚染が交通問題を考える場合に最も重要な観点であるのは明らかである。
次に挙げる表は、交通機関の種類ごとのエネルギー消費量と環境負荷とを比較したものである。
大気汚染を改善するために、「No circula(流通停止)プログラム」がある。これは燃焼不良や不完全燃焼によって発生する粒子を削減する装備を持たない古い車両の数を減らそうというプログラムである。
このプログラムと合わせて、車両を定期点検制度の見直しや、燃焼の改善と汚染物質の排出削減のための装備を持った車両に対する補助を行っている。
一方、電気交通機関の促進、トロリーバスや路面電車の改善、STEとSTCについては「都市鉄道および路面電車のマスタープラン」などが、メキシコ シティーの交通を計画・発展させる目的で行われている。
結論として、世界の他都市と同様メキシコの大都市における交通は、大都市の公共・自家用車両方の交通の質を向上させるという目的を持つ行政・プランナー・デベロッパーらに課せられた重大な課題である。