9. Tunisia Mr. Mouldi EI-Madani
チュニジア モウルディ エル・マダニ氏

 

 都市公共交通については、地上交通システムを管理するための法律No. 85-77-4 (1985年8月)およびその改正No.93-70-5(1993年7月)に規定されている。

 都市交通システムを管理しているのは以下の機関である。

 

 公営交通機関は99%の市場シェアをもち、民間の運営は市場の1%しかない(バス営業)。

 交通システムが急速に増加する都市人口のニーズに応え切れていない現状に、政府は1989年から交通市場の規制解除を進めている。こうした政策にも関わらず、1990年のトリップ量と世帯の交通費についての調査によると、交通需要は人口増加の割合よりもずっと急速に増加しており、世帯収入の10%が交通費につぎ込まれている。

 公共交通のコストは運賃収入では完全にまかなえないので、政府は補助金を出している。政府の補助金で資金不足を補うという資金源の不足が、交通システムの改良の最大のネックになっている。公共交通システムの経費の30%が政府の補助金なのである。

 交通システムはほとんどが公営で、利用者の一部を対象とした補助金をもとに運営されている。その目的は以下の通り。

 しかし、財源が十分でないことから、サービスの質および需要に見合った供給の両面で、公共交通機関は期待されるほどの進展を遂げていない。実際、都会での需要は供給を常に少なくとも20%は上回っている。

 チュニジア政府は、チュニジアの主要都市での交通の流れのパターン分布を理解し予想するために、効果的な計画ツールの開発に十分な配慮をしてきた。現在、交通マスタープランがチュニス・スース・スファックスの各都市で実施されつつあり、主に十分な道路網と魅力的な都市交通システムの計画を行っている。

 チュニジアの都市交通システムの大部分は、以下の3つの都市に集中している。

 これらの都市には約280万の人口が集中しており、これはチュニジア全体の人口の約30%にあたる。

 

チュニス管区

 国立統計局(INS)によると、チュニス管区の1994年の人口は、182万9千人である。1984年からは年率2.7%で増加し、これは同時期の国内平均2.3%よりも高い。INSによると、労働人口は36.6%である。

 一方、INSの統計は、自家用車の数を11万2千台としており、これは16人に1台の割合である。この数字はチュニス管区の交通市場49%にあたるが、北部・南部・南西部でその割合はばらつきがある。実際北部の世帯の70%が自家用車を所有しているが、南部や南西部では世帯の20%でしかなく、この地域では公共交通への関心がより高い。都市交通の残り51%を占めるのが国営3社と民間2社による営業である。

 実際、チュニス管区の都市・郊外交通網はチュニジアの他の都市とは異なっている。これは交通手段や営業主体の数や、供給されるサービスの多様性によるものである。

 これらの条件により、公共交通が国内市場の約80%を占めることができるのである。

 チュニスの主要政府営業主体であるSNT(Societe Nationale de Transport)は、914台のバスを174路線で運行し、市中心部と郊外をカバーしている。SNTはバス路線網の多くを占め、シェア第1位である(全体の60%以上)。

 路面電車システム(SLMT)の設立は早かった(1985年)ものの、総輸送力の約20%にとどまる。市中心部と郊外を結ぶ5路線を運行しているが、基本的な路線網(5路線)が完成した後は輸送力が限界に達しようとしている。

 一方TGM(郊外電車)が運営する路線のひとつは、人口の伸びが鈍いために沈滞状況にある。

 チュニスの南部もTGMと同じ問題を抱えているが、SNCFTは路線の輸送力の増強を行うために施設の近代化を行う予定である。この会社は首都と周辺地区とを結ぶ56kmの路線網を持っている。

 民間会社はバスを営業しており、その代表がTCVとTUTである。チュニス管区にそれぞれ6路線と3路線を持っているが、その市場はSNTのわずか8%にすぎない。

 これらの他に、市内には6,800台のタクシーが営業している。

 こうした交通手段や多様性の拡大にも関わらず、交通システムは以下のような多くの問題を抱えている。

 

大スファックス

 スファックス市は単独の行政区域で、人口は73万である。

 スファックスでは、トリップ量は推定で住民一人一日あたり1.43回で、その70%が自家用交通手段、30%が公共交通によるものである。この市では自転車の利用が大変重要で、全体の30%を占めている。

 交通網が機能していないため、自家用車を持っていない住民の多くが移動に2輪車両を利用するほか、生徒・学生も2輪車両を使っている。ただし学生はSORETRAS線の定期券を持っている。

 

大スース

 人口113万人が集まるサヘル地方は、スース・モナスティール・マハディアの3行政区にまたがる。この地方の特徴は交通機関相互の容赦のない競争である。

 実際、トリップ量を見ると住民の多くがルアージュ(乗り合いタクシー)・タクシー・2輪車を使っている。タクシー・ルアージュ・2輪車の市場シェアは、スース地区全体の45%である。

 公共交通の各営業主体(SNCFT、STS、ルアージュ、タクシー)がスース〜モナスティール〜マハディアの基幹路線で輸送する人員は1996年で34,000人であった。このうちferrivial交通のシェアは約29%、STSは約26%のシェア、残り38%がルアージュとタクシーである。

 個人の交通手段は自家用車と2輪車があり、これが全トリップの54%という大部分を占めている。

 

その他の都市

 チュニジアのその他の都市では、都市交通は政府が所有する公営のバス会社(地域のバス会社10社)が行っている。民営の交通機関(タクシーやルアージュ)も都市内・都市間で営業を行っている。学生の通学が公営の交通機関の主な乗客対象であるので、経費の一部をまかなうために政府からの補助金を受けている。

 

都市交通の改善

 1989年、都市交通に関する新しい政策が発表された。都市交通システムの確立・調整を各地方・地域の当局に任せようとする政策である。しかし、この政策はこの分野における地方の管理職員・管理能力の不足により、現実にはまだ適用されていない。

 交通省はまた、チュニス市の都市交通に関する問題を検討し、都市交通の調整のための技術組織を設置するよう提案した。

 他の市については、交通や都市交通管理の業務は、知事および地方自治体が行うことになる。

 

都市交通改善事業の例

 

都市交通改善事業の障害

 

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