4. Ehypt Mr. Ahmed Abd EI Moamen Ahmed Khalil
エジプト (カイロ) アハメド アブド エル モアメン アハメド カリル氏

 

1.概説

 カイロ市は近年めざましい発展を遂げている。しかしこの成長には必ずしも伸び続ける交通需要が考慮されているわけではない。ここ10年間、高速大量輸送システムを構築するために多大な努力が払われてきたが、道路の接続がごく少数実現したにすぎない。地上道路の交通渋滞を緩和し時間の浪費を防ぐために、立体交差が検討されている。

 大カイロ地下鉄網の実施は、大カイロ圏の公共交通システムの改善に向けた主要事業に位置づけられている。

 この事業は1954年から1973年の期間に、交通省の監督で交通問題研究に取り組んだ様々な諮問機関から提案され、1973年[1]に閣僚会議で承認された。

 各研究結果は、大カイロ圏内の都市交通の需要を満たすためには、拡大した市中心部の各地区を結ぶ地下鉄網の実現が必要であるという点で一致した(図1および1ユを参照)。その他に提案された事業としては、地上の交通手段の開発、自動車用トンネル、地下鉄や公共交通路線の主要駅に近い主要な広場に駐車場・多層式駐車ビルを設置することなどがある。

2.大カイロ圏地下鉄網プロジェクト

 研究により提案された「大カイロ圏地下鉄網プロジェクト」には、以下のような事業 が含まれている。

 

2.1 大カイロ圏地下鉄網1号線(イル モルグ〜ヘルワン間)
 この路線は、南部のヘルワンからタフリール広場とラムセス広場を通り、北部のイル モルグへと伸びるルートである。

 南部のヘルワンから市中心部をトンネルで貫き、北部のイル モルグへ繋がるこの路線は、地下鉄網の背景となることが期待され、延長は42.5km、33の駅を擁し、カイロの人員輸送量の約30%を運んでいる。

 9両編成を最小運転間隔2.5分で運行するこの路線の最大輸送能力は、一日一方向あたり100万人で、1時間にすると一方向あたり6万人になる。現在ヘルワンからイル モルグへ、9両編成が一日平均260回出発している。所要時間は64分で運行速度は時速40kmである。

 

2.1.1 軌道の解説
 軌道はレールと枕木からなる平面構成をバラスト道床で支えている。地上部のバラスト道床は、固めた土の上に設置され、トンネル内ではコンクリートスラブに乗っている。図2にこのタイプの軌道を示している。各部の詳細は以下の通り。

バラスト道床
 バラスト道床は、ばらの粗粒バラスト一層でできている。バラスト道床の厚さは枕木の底面から測って25〜30cmである。

レール
 トンネルと地上部分で使われるレールはUIC54セクションで、18mごとに溶接される。自動閉そくシステムの運用のための軌道回路を分けるために、接着絶縁継ぎ目が使われる。

枕木
 トンネル部分と、地上部分の主な区間の2本の主軌道には、モノブロックのコンクリート枕木が使われる。木枕木はすべての枝線で使われる。枕木の間隔は60cmである。モノブロックのコンクリート枕木の重量は約250kg、木枕木は約100kgである。

 

2.1.2 電力供給システム
 電力は軌道に沿って立つ鉄柱で支持された架線により供給される。車両の屋根に取り付けたパンタグラフで集電する。

 

2.2 大カイロ地下鉄網2号線(ショブラ〜ギザ)
 1973年に行われた事前調査〔1〕のとおり、この路線はショブラ エル ヘーマ地区から地上を走って、トンネル内でイスマエーレーア運河を渡る。サヘル地区・ロド イル ファラグ地区・ショブラ地区を通り、1号線の下をくぐってラムセス広場を横切り、アタバ広場へ至る。さらにタフリール広場まで1号線の下を通り、ナイル川の支流を2本(カスル エル ナイル橋とガラー橋の南)渡って、ドッキ広場に至る。その後上エジプト線の鉄道の下を横切ってボウラク イル ダクロルまで伸びる。2号線は地上の上エジプト鉄道と平行に南下し、終点(ギザ郊外駅)に至る。2号線の総延長は約19kmで、18の駅(5駅は地上、2駅は高架上、11駅は地下)を擁する。

 計画されている輸送能力はピーク時で一方向1時間あたり6万人で、8両編成の車両(定員1752人/編成)を使い105秒間隔で、表定速度35kmで運行する。一日あたりの輸送能力は61万5千人となる。

 

2.2.1 軌道の解説
 トンネル内の道床システムは地上部分の道床とは異なる。バラスト道床の代わりにコンクリート道床を用いるためである。地上部分の軌道は図3に示すとおり、以下のように構成されている。

バラスト道床
 バラスト道床の構成は1号線と同様であり、バラストの厚みも同じである。

レール
 レールは1号線でも使われたUIC54セクションで、18mごとに溶接し、接着絶縁継目も用いる。

枕木
 2本の主軌道にはツインブロックのコンクリート枕木が使われる。枕木の間隔は60cm、枕木の重量は250kgである。重量100kgの木製の枕木は支線にのみ使われる。

 図4に示したとおり、トンネル内の軌道は地上部分の軌道に使われるものと異なる。ここではツインブロックのコンクリート枕木下にゴムブーツが入り、最終的に平らなコンクリート道床に設置されるからである。弾力性のある軌道を維持するため、マイクロセルラーパッド(厚さ1cm)が枕木の底部の下のゴムブーツの中に設置される。トンネル外の地上部分の軌道はバラスト道床を用いる。

 その他の部分(レール・締め金具)などは、地上部分の軌道に使われるものと同じである。トンネルの内外の本線で使われる分岐器は1/8で、軌道レールに溶接されたマンガンフロッミングが木製の枕木に固定される。

 

2.2.2 電力供給システム
 2号線の電力供給には重量40kg/mの第三軌条(電力レール)タイプSTR40が使われる。4本のねじくぎで枕木に固定された絶縁体の上に設置される。電力レールは18mごとに溶接され、GRP保護カバーで覆われる。

 

2.3 大カイロ圏地下鉄網3号線(インババ〜ダラサ間)
 1973年に実施された調査結果に述べられたとおり、インババ〜ダラサまでの全長8.5kmが提案されている。現在までのところこの路線の着工に関しては決定されておらず、検討中である(図5参照)。

 

3.イル アズハル道路トンネルプロジェクト

 現在新しく建設された地下鉄線で得られた経験を生かした、地下プロジェクトが計画されている。目的は歴史的なイスラム市街地の地下を通り抜けることである。カイロのファーティマ朝地区の歴史は10世紀まで遡り、ハーン イル ハリーリやスパイス市場など有名な地区を含むエジプトでも最も人気のある主要市場の一つである。また、モスクや歴史的建造物など建築文化財も多い。そこで自動車やバスの往来を促進する目的で、サラフ サーリム通りから空港と市中心部を結んでアタバ広場まで、約2倍の全長2.7kmの地下連絡道を建設することが決定された。

 

3.1 地下構造物の制限
 契約書の基本となるのは既存の大通りの下の地下トンネルという概念である。この方法により周辺の構造物への障害を最小限にとどめ、土地の収用を少なくできる。また、地上の道路からの直接的なアクセスも可能になる。

 

3.1.1 第1次基本レイアウトは2本の独立したトンネルを想定
 2本のトンネルともゴーハル イル カーイド通りの下を平行に走り、イル アズハル イマム ビルで分岐する。トンネル(T2) はイル アズハル通りの下を南に向かう。トンネルはアタバ広場までこの通りに沿って掘られ、広場には両方のトンネルのためのTBMの出口と換気設備を設置する。インターチェンジはオペラ ビルの南に設けられ、広場の道路網と接続することになっていた。しかし周辺環境との適合性が検討された結果、以下の3つの主な理由から新しいレイアウトが必要となった。

 

3.1.2 第2次基本レイアウトは2本のほぼ平行なトンネルを想定
 前述した障害を避けるために、北トンネルの終わりを南へ、南トンネルを北へ動かすことが決定された。レイアウトの基本はほぼ平行な2本のトンネルであるが、1940年建造のイル アズハル ビルの地域では基礎についての情報が得られないため例外となっている。この観点から、ほとんどの取り扱いに注意が必要な構造物の基礎の種類について系統的な調査が始まり、イル アズハル ビルも調査された。同時に次のような調査も行われた。

 

3.1.3. 第3次基本レイアウト
 イル アズハル ビルの基礎がわかった上で、2本のトンネルを全線に渡って平行に設計し直した。路線はゴーハル イル カーイド通りのTBMの入り口からザンカロウニ換気ステーションの中心まで、長い直線を描く。トンネルから地上までの通路も計画された。

 

3.1.4 第4次基本レイアウト
 中央換気ステーションの位置はこれ以上動かせないため換気全体を再考することになり、イル アズハル通りとポートサイド通りの交差点にステーションを設けることにした。しかし、カイロ交通局がポートサイド交差点の交通を遮断することを認めなかったため、この提案は承認されなかった。この交差点はほぼ四六時中渋滞しているからである。

 

3.1.5 第5次基本レイアウト
 最終的に第三の換気施設の位置を、ポートサイド通りの州有の土地にある既存の高架道路の西側に決定した。これは以下の図6に「第5次基本レイアウト」として掲載した。

 

3.2 機器の選択
 トンネルに入ることが許される車両に適した機器が選択された。自家用車とバスだけに通行を許可することになった。

 

3.2.1 換気
 トンネルのプランと概要が決定して、ついに換気の設計が完了した。NATとの合意に基づく決定である。諮問委員がいくつかの数値を設定した。下の表1は換気装置の規模を考える際に想定される交通量のまとめである。

 SACCARDO換気システムを採用し、トンネルの先端にジェットファンを追加することになった。

 

3.2.2 運用機器

 運用機器は以下の通りである。

 

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