4. Indonesia Mr. Zulsam Kifli
インドネシア (ジャカルタ) ズルサム キフリ氏

 

1.序説

 インドネシアにおける都市部の人口は、全人口の17%(1970年)から22%(1980年)、さらに31%(1990年)へと急速に増加している。年に5.4%という都市部人口の増加率から考えて、21世紀初頭には都市部に住む人口は50%に達すると見られている。

 インドネシア共和国の首都ジャカルタは、インドネシア最大の都市であり、世界でも最も人口密度の高い都市である。ジャカルタ市の面積は約651km2、人口は1990年で約820万人であった。しかし、ジャボタベックと呼ばれる首都圏は、ボゴール・タンゲラン・ブカシ・ジャカルタを中核都市として、6,816km2に及ぶ面積と1,710万の人口を抱えている。2015年にはジャカルタの都市人口は1,210万人、ジャボタベック全体では3,200万人に達すると思われる(表1参照)。

2.交通システム

 自家用車の数は1990年にジャカルタで56万台、ジャボタベックで67万台だったと言われる。これが2015年にはジャカルタで160万台、ジャボタベックで250万台になると予想されている(表2を参照)。

 この表でわかるとおり、動力付の車両はジャカルタでも重要な役割を担っているが、依然としてジャカルタのモータリゼーションは比較的遅れている。1990年で人口1000人あたり68.1台(ジャカルタ)であり、ジャボタベックでは39.2台である。アメリカで半分以上の世帯が2台以上の車を所有するのとは比べるべくもない。

 1990年の自動車の利用トリップはジャボタベック全体でのべ960万回であり、そのうち180万回はジャカルタ〜ボタベック間の通勤である。この数字が2015年にはのべ2360万回、そのうち580万回が通勤になると見られる(表3を参照)。

 現在ジャボタベックの公共交通はもっぱらバスによるもので、鉄道は全公共交通機関の輸送量の0.6%と些細な役割しか果たしていない。

 バスのすし詰め状態は特にラッシュの時間帯にひどく、バスのサービスレベル(LOS=Level of Service)は依然低い。ジャカルタにおいて朝のラッシュ時のほぼ全路線を対象とした調査では、バスの58%が定員超過であり、30%が「重度」の分類であった。

 

3.都市公共交通の問題点

 近年、ジャカルタを初めとするインドネシアのほとんどの大都市で、道路問題の深刻化・複雑化が見られる。道路網の拡大と、車両の増加・土地利用の拡大・人口増加との間のバランスがとれないのである。

 その他の問題としては、渋滞、遅延、大気汚染・騒音、交通事故、道路使用者のモラルの問題がある。ラッシュ時のジャカルタの幹線道路では、車両の平均速度は時速20km程度にすぎない。大気汚染は幹線道路各所で基準を越えている(表5を参照)。騒音公害は身体的にも精神的にも健康に有害となるが、これも各所で基準を越えている。

4.大量輸送

 大量輸送システムは、特に需要が集中するスディルマン〜サムリン通りなどの特定の大通りでの導入が考えられる。このほかにも多様な選択肢が考えられる。

しかし、最善の策を選択するには、あらゆる可能性を考慮する必要がある。

 

5.結論

 社会的理由と経済的理由の両面から、公共交通は低所得者層の便宜を図る必要がある。同時により所得が高い層に対しては、自家用車の代わりとして実現可能な代替交通機関を提供しなければならない。将来的には鉄道が果たす役割も重要になるであろうが、それでもジャカルタにおいてはバスが主たる公共交通機関であり続けると思われる。

 

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